王子様とブーランジェール
天然って、何なんだバカヤロー!
しかし、理人の質問は、更なる俺の不意を突く。
「…夏輝さ?自分が桃李にどう思われているか、わかってる?」
「…ん?」
桃李が、俺のことを…どう思ってるかって…?
(………)
何てことを聞くんだ、この男は。
それ、俺的にはアルティメットな質問じゃねえか…!
一気に恥ずかしくなり、赤面してるのだろうか顔が熱い。
考えただけでも照れる。照れる…!
桃李が俺のことをどう思ってるか。
まあ…俺が想ってるように、『夏輝のことが好き!』って思ってくれてんなら、俺は嬉しい限りの万々歳なんだけど。
なんだけど…世の中そんなに甘くない。
ただの付き合いの長い幼なじみなんじゃないだろうか。
普通…というよか、あまり構われてないような気がする。俺に興味なし。
隣にいても、意識されてる素振りもないし。
寝ぼけて『靴下はかせて』とか言われて、男として見られてないんじゃ…。
…あ。あの不良とのケンカ騒ぎの時に、ついつい抱き締めたり、おでこにキスしちゃった時は意識されてたっけ。
でも、数日経つと元通りで…あぁ。事故みたいに思われたかな。
結局、俺達の間に恋愛要素は見当たらずで。
ただの幼なじみで。
「…ただの長い付き合いの人…」
…だよな?
質問には答えたので、恐る恐る理人の方を見るが。
だが。
「…はぁっ?!」
ドスの利いた声に、ザワッとしてしまった。
理人に完全睨まれた。
お怒り100%の目付きで。
…え?何で怒ってんの?
違うの?
「これだから!…これだから困るんだよ!この天然鈍感ゲロしゃぶヤロー!」
一気に全部詰め込まれた!…とても恐ろしい肩書きになってる。
どれだけお怒りか知らないが、ゲロしゃぶヤロー、いい加減しつこいな。
「じゃあ…桃李が、自分と夏輝の関係を周りにどう説明してるか、知ってる?」
桃李が?
俺とのことを、周りにどう言ってるか?
少しでも良い答えを期待したいところだが、そんな期待をしちゃいけない。
「そりゃあ…幼なじみ、でしょ」
これが、鉄板…だろ。
だが、理人は鼻で笑っている。
何だか、失笑みたいな。
「…これ、宿泊研修の時に、黒沢から聞いた話なんだけどさー…」
「…黒沢さん?宿泊研修?もうだいぶ前の話になるぞ?」
…しかし、空前絶後のバカが放った答えに驚かされるのは、間もなく。