王子様とブーランジェール



天然って、何なんだバカヤロー!



しかし、理人の質問は、更なる俺の不意を突く。



「…夏輝さ?自分が桃李にどう思われているか、わかってる?」

「…ん?」



桃李が、俺のことを…どう思ってるかって…?



(………)



何てことを聞くんだ、この男は。

それ、俺的にはアルティメットな質問じゃねえか…!

一気に恥ずかしくなり、赤面してるのだろうか顔が熱い。

考えただけでも照れる。照れる…!



桃李が俺のことをどう思ってるか。



まあ…俺が想ってるように、『夏輝のことが好き!』って思ってくれてんなら、俺は嬉しい限りの万々歳なんだけど。

なんだけど…世の中そんなに甘くない。

ただの付き合いの長い幼なじみなんじゃないだろうか。

普通…というよか、あまり構われてないような気がする。俺に興味なし。

隣にいても、意識されてる素振りもないし。

寝ぼけて『靴下はかせて』とか言われて、男として見られてないんじゃ…。

…あ。あの不良とのケンカ騒ぎの時に、ついつい抱き締めたり、おでこにキスしちゃった時は意識されてたっけ。

でも、数日経つと元通りで…あぁ。事故みたいに思われたかな。



結局、俺達の間に恋愛要素は見当たらずで。

ただの幼なじみで。



「…ただの長い付き合いの人…」



…だよな?



質問には答えたので、恐る恐る理人の方を見るが。

だが。



「…はぁっ?!」



ドスの利いた声に、ザワッとしてしまった。

理人に完全睨まれた。

お怒り100%の目付きで。



…え?何で怒ってんの?

違うの?



「これだから!…これだから困るんだよ!この天然鈍感ゲロしゃぶヤロー!」



一気に全部詰め込まれた!…とても恐ろしい肩書きになってる。

どれだけお怒りか知らないが、ゲロしゃぶヤロー、いい加減しつこいな。



「じゃあ…桃李が、自分と夏輝の関係を周りにどう説明してるか、知ってる?」



桃李が?

俺とのことを、周りにどう言ってるか?

少しでも良い答えを期待したいところだが、そんな期待をしちゃいけない。



「そりゃあ…幼なじみ、でしょ」



これが、鉄板…だろ。



だが、理人は鼻で笑っている。

何だか、失笑みたいな。



「…これ、宿泊研修の時に、黒沢から聞いた話なんだけどさー…」

「…黒沢さん?宿泊研修?もうだいぶ前の話になるぞ?」



…しかし、空前絶後のバカが放った答えに驚かされるのは、間もなく。



< 736 / 948 >

この作品をシェア

pagetop