王子様とブーランジェール
ちゃんと使っててくれたのか。
俺があげたおみやげを…。
…これ、選ぶのに結構頭を抱えたんだよ。
お土産って、センスが問われるからな?
桃李にあげる物だけは、何としても良い物を選びたい。
家族へのものは、家族に言われた通りの物を買ったが。
友人・知人にはプレゼントみたいなもんだから、注文がなくて逆に困る。
だから、テキトーにポンポン選んで買ったけど。
好きな女の子へのおみやげは…ダサいモノとか誤って渡して『うわっ…』となったら、この上ない悲劇だ。
それに…喜ぶ顔が見たい。
そういうワケで、慎重に慎重を重ねる。
集合時間寸前まで、チョイスに時間がかかっていた。
横で凜に『何でそこだけ優柔不断?!』と、呆れられる。
バカヤロー。
このチョイスは、俺の今後の評価がかかってんだよ。
現在の彼女である里桜が桃李にやらかしてくれちゃったおかげで、秋緒や理人のお怒りをくらい、俺は…全然桃李に会えてない。
桃李に目を合わせて貰えなかったのが、一番ショックだった。
ここで、挽回せねば…。
可愛いおみやげでも渡して、会話のきっかけになれば。
でないと、もうとっくに桃李不足で。
メンタルやられて…今回の試合、よく優勝出来たわ。
『はぁ?夏輝ってホントわかんねー。おまえの今のカノジョは里桜だろー?里桜にはもう買ったのか?』
うるせー。
何かテキトーなモノ買ったわ。
それより、こっちに集中させろ!余計な雑念入れるな!
『はぁ?マジでわかんねー。どっちが本命よ。おまえはいつだって二股だな。カノジョ作っても絶対桃李が一番。マジで頭おかしいわー』
二股…やかましい!
桃李の方が格上に決まってんだろ!
俺と何年の付き合いだおまえは!
頭おかしい…わかっとるわそんなこと。
『へーへーわかった。あ、ちなみに俺、秋緒にマスキングテープ買ったぜ?岡山県では定番みやげらしい』
『…え?あ、俺もそれにする』
『慎重を重ねた割にはパクりか!』
結局、凜のパクりであるマスキングテープ一個と、隣に置いてあった高そうなハンカチをひとつ買う。
単に桃の柄で、ピンクで桃李っぽいなーって。
すると、凜に『慎重を重ねた結果がそれ?安易に桃の柄買う?おまえ、ホント桃李のことになるとダメなヤローになるな』と、言われた。
渡す時も、ダメなヤローで。
夏祭りの時に渡すまでにも、なかなかタイミングが掴めずモタモタしていたら、門脇部長に『情けない…』と、言われた。
ある意味、この上ない悲劇。