王子様とブーランジェール



ちゃんと使っててくれたのか。

俺があげたおみやげを…。



…これ、選ぶのに結構頭を抱えたんだよ。



お土産って、センスが問われるからな?

桃李にあげる物だけは、何としても良い物を選びたい。

家族へのものは、家族に言われた通りの物を買ったが。

友人・知人にはプレゼントみたいなもんだから、注文がなくて逆に困る。

だから、テキトーにポンポン選んで買ったけど。

好きな女の子へのおみやげは…ダサいモノとか誤って渡して『うわっ…』となったら、この上ない悲劇だ。



それに…喜ぶ顔が見たい。



そういうワケで、慎重に慎重を重ねる。



集合時間寸前まで、チョイスに時間がかかっていた。

横で凜に『何でそこだけ優柔不断?!』と、呆れられる。



バカヤロー。

このチョイスは、俺の今後の評価がかかってんだよ。

現在の彼女である里桜が桃李にやらかしてくれちゃったおかげで、秋緒や理人のお怒りをくらい、俺は…全然桃李に会えてない。

桃李に目を合わせて貰えなかったのが、一番ショックだった。



ここで、挽回せねば…。

可愛いおみやげでも渡して、会話のきっかけになれば。

でないと、もうとっくに桃李不足で。

メンタルやられて…今回の試合、よく優勝出来たわ。



『はぁ?夏輝ってホントわかんねー。おまえの今のカノジョは里桜だろー?里桜にはもう買ったのか?』



うるせー。

何かテキトーなモノ買ったわ。

それより、こっちに集中させろ!余計な雑念入れるな!



『はぁ?マジでわかんねー。どっちが本命よ。おまえはいつだって二股だな。カノジョ作っても絶対桃李が一番。マジで頭おかしいわー』



二股…やかましい!

桃李の方が格上に決まってんだろ!

俺と何年の付き合いだおまえは!

頭おかしい…わかっとるわそんなこと。



『へーへーわかった。あ、ちなみに俺、秋緒にマスキングテープ買ったぜ?岡山県では定番みやげらしい』

『…え?あ、俺もそれにする』

『慎重を重ねた割にはパクりか!』



結局、凜のパクりであるマスキングテープ一個と、隣に置いてあった高そうなハンカチをひとつ買う。

単に桃の柄で、ピンクで桃李っぽいなーって。

すると、凜に『慎重を重ねた結果がそれ?安易に桃の柄買う?おまえ、ホント桃李のことになるとダメなヤローになるな』と、言われた。


渡す時も、ダメなヤローで。

夏祭りの時に渡すまでにも、なかなかタイミングが掴めずモタモタしていたら、門脇部長に『情けない…』と、言われた。



ある意味、この上ない悲劇。



< 865 / 948 >

この作品をシェア

pagetop