王子様とブーランジェール
やはり…。
決死の告白も、先ほどと同じく『お気遣い』として捉えられてしまった。
何で…。
しかしめげずに、もう一言を添える。
「桃李…お気遣いじゃないぞ?」
「ん?」
「…俺が本当に好きなのは、おまえだけ…って意味なんだけど」
「い、いやそれはないでしょ」
「…はぁっ?!な、何で?」
また…!
「だって夏輝みたいな完璧で素敵な人が、ダメドジの私を好きになるはずがないです…」
…また!
なぜ、こんなにこの思い違い、ガチガチなの?
俺の決死の告白は、完全に『同情』として歪んで捉えられている…。
何で…。
「…何で、何でなんだ!…お気遣いじゃねえって言ってるのに!…おまえのことが!おまえのことだけが好きって言ってんだぞこっちはぁっ!」
「…え?」
「え?じゃねえよ!」
「え?」
「だーかーら!俺は、ずっと…ずっとおまえだけを好きだったのに!」
「えっ…わ、私だけを…?」
「そうだよ!…俺は、おまえだけだよ!この何年間も、ずっとおまえだけを…好きなんだよ!」
こんなにも好き好きと…。
恥じらいと照れは、とうに捨てた…。
「あ…」
桃李の顔、きょとん顔のまま。
三度、嫌な予感だ。
「え?何年間もずっと…?」
「そ、そうだよ!」
「だって夏輝、彼女何人もいたでしょ?…なのに、ずっと私だけを好きだなんておかしいよ?」
「あ…」
…しまった。
そこの誤解も解かなくてはならなかった…!
「本当に、お気遣いすみません…」
ペコリと頭を下げられた。
…何っ!
またしても、愕然とさせられる。
あぁぁぁ、またこれだ…。
振り出しに戻る、みたいな。
いくらどれだけ、素直になっても。
恥じらいと照れを、捨て去っても。
ヤツの心に届かない…。
5年間の産物である『思い違い』という名の壁は、頑丈過ぎる。
どうやっても、壊せないでいた。
「…何で、無しにするって言ったんだよ…」
あの『大好きです』を…。
まだ答えを聞けていない疑問を、ふと口にする。
すると、ヤツはビクッとしていた。
「あ…そ、それは…」
「………」
何だよ。今さら言いづらそうにするな。
俺はとうとう恥じらいも照れも、捨て去ってしまったってーの。
言え。もうこの際、本当のことを聞かせてくれ。
「と、突然だったから…急にそんなこと言われて夏輝だって困ると思ったの…」
「…ふーん」
「だって、迷惑でしょ…」