王子様とブーランジェール
(………)
いや、バカだとは重々承知なんですけど。
教育と指導?
小笠原の?
先ほどの四人を横目で見る。
…え。
もし、小笠原が桃李を教育するとなれば。
こんな風になっちゃうの?
やたらめったら背筋が不自然に伸びて、清々しくなっちゃって?
髪が変につやつやになっちゃって?
俺のこと『夏輝様!』って呼ぶようになっちゃったりとか?
(………)
…やめてね。そんなこと。
空前絶後の恐ろしさを感じる。
ブルッときた。
「…そういや夏輝、今井には報告したの?桃李とのこと」
「したした。おまえより先にな」
「ふーん。…で、あれ止めなくていいの?」
「………」
理人が指を差した方向とは。
ビッグマシュマロと、かつてプチマシュマロだった二人のコント現場だった。
「だったら、どんな戦法で私の夏輝様を落とした!ぶりっこか?ぶりっこか?!…女の武器存分に使いやがってぇ!」
「あ、あ、あ…ぶ、ぶきは…夏輝に没収されました…」
「はあぁぁ?没収!…夏輝様に武器を没収された?…それだけでも腹立たしいぃ!武器って何だ!何だぁ!」
「あ、あ、あ…相手を倒す機械です…」
「はあぁぁ?相手を倒す機械って何だよ!意味わかんねーこのバカンダ!まさかアダルトグッズじゃねえだろなぁ?」
バカンダ…バカと神田でバカンダか。
山田、うまいな。
「あ、あ、あだるとぐっず…」
「あぁ!おまえ、まさか女の禁じ手使ってんの?サイテーなバカンダだな?この!…あぁ!ひょっとして、このおまえの豊満な巨乳で夏輝様を落としたのか!」
「え、え、ええええ…!」
「おまえのこの胸、デカすぎんだよ!…まさか、人工じゃねえだろなぁ?オールシリコン!みたいな?あぁ!」
「な、なななな!」
「ちっ!触らせろ!人工かどうか確かめてやる!触らせろぉー!」
そう言って、山田は桃李の体を全身でホールドし始めた。
桃李からは「ひいぃぃっ!」と切ない悲鳴が響いている。
…何っ!さ、触る?!
山田は…男だぞ!
そこは…俺だってまだだ!
「…山田!おまえだけは、それはやめんか!」
すると、横にいる小笠原が「…あ!そういえば!」と、何かを思いだしたような様子だ。
「そういえば夏輝様!我々、夏輝様のファンクラブの名前、決まりましてよ?」
「は、はぁっ?!」
ファンクラブ…だから、いらない!
…やっとの思いで辿り着いたけれども。
実は、ここはまだゴールではない。
新しい時代と生きるための新しいスタートだったりする。
やっとこさ幕開けだ。
スタートラインには、立ったばかり。
baKed.9 eNd
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