先生。
玲太の細長い指が、私の頬に触れてその目がゆっくりと私を捉える。
何かを考える時間なんてないほどに早く、玲太の顔が近づいて、口の中に鉄の味が広がった。
…嘘。
「それだけじゃなくて俺の心も全部、持ってけよ」
だから、その時の私はひどく混乱していて…
誰かに見られていたかも。
そんなことを考えることすら出来なかった。
「玲太…」
「ごめん…お前のこと好きになったかも…」
聞きたいことはたくさんあった。
だけど、声が出なくて…
ただただ戸惑った。
だけど、そんなシンと沈黙になったこの空間を破ったのは、校内放送。
『3年6組川崎玲太、2組夏目潤。至急大会議室に戻りなさい。繰り返します…』
「……行けよ」
玲太の突き放すような声に、私は首を横に振る。