エリート弁護士は独占欲を隠さない

弁護士にも得意不得意があって、特定の分野の民事しかやらないという人も多い。

どこかの会社の顧問弁護士専門という人もいる。

けれども九条さんは、かつては迫田先生と一緒に、実刑か執行猶予かを争うような重大な刑事事件を多数担当していたと聞いている。

しかも、完璧な弁護ばかりだったとか。


そのため、九条さんはここ、朝日法律事務所の中でも一目置かれているような弁護士で、いずれは事務所を背負うような存在になると噂されている。

だけど今は、刑事事件には積極的に関わろうとしない。

しかも、依頼されれば好き嫌い言わずなんでも引き受けるのに、実刑になる可能性があるような刑事事件だけは決して受けない。

優秀な彼が、そうした事件から身を引いたのはどうしてだろう。

合わなかった?


「コーヒー入りました。どうぞ」


松下さんと迫田先生の分を差し出すと「ありがとう。ま、頑張って」と彼女は出ていった。
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