エリート弁護士は独占欲を隠さない

「九条さん、あの……」
「なんだ?」


エレベーターホールでやっと止まった彼に話しかけると、視線を合わせることなくつぶやく。


「文献、遅かったですか?」


恐る恐る尋ねると、やっとこちらを向いてくれた。


「来週までだと言っておいたはずだ」


はー、よかった。怒ってないみたい。


「でも、図書館に行かれるというのは……」

「他にも調べ物ができた。ついでに頼んでおいた文献も自分で調べるからもういいぞ」


そのとき、エレベーターが事務所のある三十階に到着したので、乗り込んだ。

朝日法律事務所が入居しているのは『La mer TOKYO』という地下三階地上五十五階の大型商業ビル。

上層階の四十二から五十一階は一泊百万もするというスイートルームを持つ超一流ホテル。

そして五十三と五十四階には高級レストランやバーが並び、十一から四十一階までのオフィスフロアには他にも有名企業が入居している。
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