エリート弁護士は独占欲を隠さない
「あっ……」
振り返るとそこには、半年ほど前まで交際していた、野口彰人(のぐちあきと)が立っていた。
背が一七七センチで肩幅広めのガッシリ体型の彼は、同級生だけどひとつ年上。
大学時代から三年近く付き合っていたものの、ちょっと金銭面でだらしないところがあって、私から別れを告げた。
優しい彼氏でそれ以外の不満はなく、本当は別れたくなんてなかったけれど、あのまま付き合っていたら金づるになりそうで彼にとってもよくないと思ったのだ。
「彰人……久しぶり」
「うん。仕事中?」
そう尋ねてくる彼もスーツ姿だった。
「そう。上司を車に待たせてて……」
「上司って、弁護士?」
「うん」
彰人は大手商社『三谷(みつたに)商事』に勤めている。
私が弁護士事務所に就職することが決まったとき、『金持ちは性格悪いぞ』なんて散々言っていたけれど、皆いい人ばかりだった。
九条さんを除いては。
「それじゃあ、行くね」
特に話すこともない。私は身をひるがえして車の方に足を進めた。
すると、「待った」という声と共に、腕をつかまれる。