エリート弁護士は独占欲を隠さない

図書館を出ると、西の空が茜色に染まっていて美しく、心が洗われる。


「あっ、とんぼ」


目の前を横切ったとんぼに気づき声を上げると、九条さんは「久しぶりに見たな」と優しい笑みを浮かべている。


鬼のくせして、時々こういう顔をするなんて反則だ。
無駄にドキッとするでしょ。


「今日は直帰する」


いつもより早い時間だけど、彼も忙しくしているのでたまには休息も必要だろう。


「はい。それでは私は電車で帰宅します。お疲れさまでした」


頭を下げたのに、九条さんは一歩も動こうとしない。

あれ、もしかして私は仕事が残ってる?


「お前、このあと時間ある?」
「はい……」


やっぱり。
なにを言いつけられるのやらと覚悟した。


「飯、食いに行くぞ」
「今なんて?」
「だから、飯! フレンチを予約してある」


彼の眉間にしわが寄る。
だけど私はポカーンと口を開けていた。
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