エリート弁護士は独占欲を隠さない

自分のデスクに戻り、反発を胸にしまって歯を食いしばる。

出産を機に退職した九条さんの前秘書は、たしかに優秀な人だった。

七年ほどこの道ひと筋だった彼女は私とは違い経験も豊富で、しかも〝パラリーガル〟だった。

パラリーガルというのは、私たちと同じように一般的な事務もこなすけれど、法律そのものや法律事務手続に関する知識を要求される職業で、朝日法律事務所にも多数在籍している。

だけど私は一般事務としての採用なので、法律の知識は求められない電話対応やスケジュール管理、お茶くみなど、いわば後方支援のようなことが主な仕事だったはず。

“パラリーガル”として雇われている人たちとは違うのに。

冷たすぎる対応に沸々と怒りも湧いてきたけれど、ここは踏ん張りどころかもしれない。

研修期間を終えたんだから、もう一人前の事務員として活躍すべきだし……次は「よくやった」と言わせてみせる。

ちょっと負けず嫌いな私は、怒りを仕事へのエネルギーに変えることにした。
< 4 / 45 >

この作品をシェア

pagetop