エリート弁護士は独占欲を隠さない
そんなふうに意気込みだけは十分なのに、現実は散々だった。
「五十嵐! 何度言われたらわかる。記入漏れが多すぎる」
「すみません」
それからも平謝りの毎日。
これでも努力しているつもりなんだけど、“つもり”で許されるほど甘くはない。
完璧に仕上げなければ、裁判所にも受け付けてもらえない。
「もういい。自分でやる」
九条さんは表情をなくしてボソッとつぶやく。
すごーく怒ってる……。
だけど、ひるんでいる場合じゃない。
このままで終わりたくない。
「いえ、もう一度やらせてください」
頭を下げると、「一時間だけ待ってやる」と数枚の書類を返された。
それから一時間の集中力は、自分でも驚くほどだった。
返された書類はもちろん完璧に書き直し、他に頼まれていた申請書の間違いもすべて訂正した。
「できました」
再び書類を持って九条さんの部屋に向かうと、判例を読んでいた彼は視線を合わせることもなく書類を手にする。
一枚、二枚とめくられていく間、緊張のあまり冷や汗が止まらない。
最後の書類をチェックし終えた彼は、やっと私に視線を向けた。