エリート弁護士は独占欲を隠さない
「寂しいから抱きしめてって、ねだったじゃないか」
耳元で甘く囁かれ、思考が停止する。
私がそんなことを言ったの?
「希望通り抱きしめてやると、安心したようにすーっと眠った」
だ、抱きしめて? まずい、まったく覚えてない。
「そ、それは酔っぱらって……」
「覚えてないのか? でも残念。俺が覚えてる」
耳に彼の吐息がかかり、ゾクゾクする。
「す、すみませんでした。私、帰ります」
視界に入った時計は八時半を示している。
遮光カーテンのせいで暗いだけらしい。
「いいから、少し休憩しろ。走りすぎてヘトヘトなんだろ?」
彼はそう言いながら手の力を緩めた。
……と思ったら、私をくるっと回して、再び腕の中に閉じ込める。
「九条さん?」
「いいから黙って」
優しく私の髪を撫でる彼は、事務所での鬼の姿は鳴りを潜めている。
最初こそ抵抗したものの、彼の胸が温かくて、そして居心地がよくて体を預けていた。