星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
「んー…」
いつもの夕刻、いつもの英語準備室。
私の隣には腕組みして難しい顔をする先生。
「ねっ、いいでしょ?お願い!お願いッ!!」
その先生に手を合わせる私。
「だってお兄さんは保護者じゃないでしょ?」
「え、だって大人だよ?お酒も飲めるし、深夜外出も出来るし。
それになんと言っても私のお兄ちゃんだもん!両親に何かあったらお兄ちゃんが私の面倒見てくれるんだもん!
なんならほら、選挙権もあるし!」
「選挙権は南条もあるでしょ?今月から」
「そっ、そうだけど!いや!そうじゃなくてっ!!」
兄の誕生日プレゼント『何かスペシャルなことをやってあげる券』を使って、イルミネーションデートに行くための手伝いをしてもらうことにした。
兄に夜デートを許可させて、只今先生を説得中。
ちなみに両親には兄と行くということにして兄にアリバイ工作してもらう手筈になっている。
先生には秘密だけれど…
「んー…でもなぁ…」
「だって先生。私、好きな人と過ごすクリスマスって初めてなんだよ?初めては一生に一度なんだよ?」
先生の顔を覗き込んで食い下がる。
「っ…!色仕掛けは反則!」
「?」
「分かった!分かったからこんなとこでその顔やめて」
首を傾げる私を先生はぐいと押しやる。
そして、
「24日、イルミネーション行こう。
その代わり、帰宅時間は10時厳守。必要に応じてお兄さんに送り迎えしてもらうこと。いいね?」
と、『教師』の顔で言った。
「はいっ!先生ありがとう!!」
私はもう嬉しくて嬉しくて嬉しくて、本当は先生に抱き付きたいくらいだったけれど、遠慮して先生のパーカーの袖をぎゅーっと引いた。
「あ!おい…!」
先生は「はぁー…」と深い溜め息をついて、袖を掴む私の手に自分のそれを重ねる。
そして指と指を絡めるようにして袖から手を引き離す。
(あ…)
引き離されたのに、でもしっかりと繋がれた手に却ってドキドキが加速する。
触れあった指から掌、身体中を伝って頬へとどんどん熱が伝わったかのように熱くなる。
「そういう可愛いことするのはまた今度、ね?」
「…はーい」
(また『今度』、ってことはデートの時ならいい、のかな…?)