星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」

♪~

 昼頃、スマホの着信音が部屋に響いた。


(あ…!)


「もしもし?」

「舞奈ちゃん?」

 夜璃子さんからの電話だった。


「夜璃子さん!もう大丈夫なんですか!?」

「あはは、ごめん。心配かけちゃったわね。
 まだ入院してるけど、もう一般の病室にいるし、手術が上手くいったからこれからは心臓のこと気にしながら生活しなくてもよくなるし大丈夫」

「ほんとですか?でも身体大事にして下さいね。私夜璃子さんと一緒に学校行きたいって思ってるんですから」

「うふふ。ありがと」


 夜璃子さんが柔らかく笑う。もう大分体調が良いみたいだ。


「それでね、電話したのは受験の時のことなんだけど」

「あっ、はい」

「私ね、このまま合併症とかもなく回復すればもうしばらくで退院できそうなんだ」

「あ、じゃあ夜璃子さんちに…」

「うん、それなんだけどね…退院しても一人で東京にいるのを両親が心配してさ。それで春休みの間だけ実家に帰ることにしたの」

「そうなんですね…」

「でも安心して。私はいないけどうち、泊まってもらっていいから」

「えっ?」

「入試の前の晩、うちに泊まって、家のものとかも自由に使ってもらって全然構わないからさ」

「いいんですか?」

「もちろん。
 それでね、家の鍵をそっちに送りたいんだけど、昴に送っとけばいいかな?」

「あ…」


 不意に先生の名前が出て戸惑う。


「ん?」

「あっ、もしできればうちに直接送って頂いてもいいですか?あの…今学校行ってないので…」

「OK。じゃ舞奈ちゃんちに送るわね」

「ありがとうございます」

「あと、乗る電車が決まったら教えてね。うちに着く頃にガスや家電の使い方、誰かに教えに行ってもらうから」

「分かりました」
< 260 / 316 >

この作品をシェア

pagetop