星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
 パタンとドアが閉まり、私はおずおずと起き出した。


(…え、と…えっ!?ひゃあぁぁ!?)

 辛うじてルームウェアは着ているものの、乱れた襟元に気付いて狼狽える。

(見られちゃった!?)

 いや…今更見られちゃったどころじゃないか。


 私はあまり自分の身体を見ないようにしながら紺のセーターとパンツに着替えて部屋を出る。昨日のうちに買っておいたパンとサラダの他に先生がコーヒーとスープを用意してくれて香ばしい薫りが立ち込めている。

 顔を洗うと、ふたりでテーブルに着く。


「いただきます…」

「召し上がれ」


(やっぱり、こんな毎日が続くといいな)


 レースのカーテンの向こう側はすっかり雪が降り止んで、テレビもほとんどの交通機関が平常運転している旨を伝えている。

 食事が済むと私は身支度を整えて荷造りした。
 大学の前までは先生が送ってくれることになっている。


「午後から学校に行かなきゃならないから先に帰るけど、大丈夫だからな。今まで南条が努力してきたこと俺はずっと見てきたし、落ち着いてやれば絶対大丈夫」

 先生が私の頭をくしゃっと撫でる。


「ん、大丈夫だよ。
 私にはいつだって先生が付いてるし、心配してない」

 私は先生に左手を差し出す。


「あ…」


 青い指輪が私の薬指に光るのを見て、先生が小さく声を上げた。


「持ってきたの…?」

「私のお守りだもん」

「俺、酷いこと言ったのに」

「『別れよう』なんて、あんな電話一本で割り切ることなんて出来ないもん。もしあれがホントでも私は今でも先生が好きだったよ」

「南条…」


 次の瞬間、熱いキスが降る。

 指輪を包むように左手を握り、もう一方の手を私の背中に回して抱き締める。


「せんせ…」

「この冬が終わったら…4月になったら、俺達は一緒になれるから。もう誰にも邪魔はさせない」

「ん…」


 先生はもう一度優しく口付けした。



「さあそろそろ行こうか」

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