次期社長と訳あり偽装恋愛
「お前さ、よくここを利用しているけど自分の噂を知ってるんだろ?」
「噂って」
「あの立花翔真に彼女が出来たって噂」
「あぁ、そのことか。知ってるよ。噂じゃなくて事実だし。あ、彼女が作ってくれたハンバーグの方が旨いな」
ハンバーグを食べながらサラッと言う。
高柳課長は、あっさりと認めた立花さんをまじまじと見る。
「やっぱり確信犯じゃねぇか!さっきだって想像に任せるとか、普通に彼女の手作り弁当を食べてるって言えばよかっただろ!てか、然り気無く惚気るなよ」
「別に惚気てるつもりはないよ。本当のことだし」
「お前……」
高柳課長は呆れている。
立花さんはどうしてそんなことを言うの?
私は恥ずかしいやら居たたまれない気持ちになり、水の入っているコップに口をつけた。
「ゴホッ」
動揺して水を飲んだからか、むせてしまった。
「おい、河野大丈夫か?」
「だ、大丈夫。むせただけだから」
「ホントかよー。お前、アレだからまた夏風邪ぶり返したんじゃないのか?」
アレだからって濁したけど、バカだからって言いたいんでしょ!
さっき私が宮沢をからかったお返しとばかりに、ニヤニヤしている。
「そんなわけないでしょ」
「いや、その可能性はあるかも知れないよ」
「えっ」
私が反論したら、突然立花さんがおかしなことを言い出してキョトンとしてしまった。