次期社長と訳あり偽装恋愛
「忘れ物をしたんじゃ……」
「あれは口実だ。梨音ちゃんと触れあうために」
震える声で問いただせば、思いもよらない答えが返ってきて絶句した。
「最近、残業続きでまともに晩ご飯も食べれてないし、何より梨音ちゃん不足」
私の存在を確かめるように、首筋に顔を埋める。
立花さんと付き合いだして二週間が経っていた。
仕事が忙しくない日は、私の部屋で晩ご飯を一緒に食べたりしていた。
今週は夜遅くなるから晩ご飯はいらないと言っていて、今日のお弁当だって一週間ぶりに作った。
最近、忙しそうにしていたので体調とか大丈夫なのか気になっていた。
いやいや、そんなことより誰かにこんな場面を見られたら大変だ。
どうにかこの腕の中から脱げ出そうと試みていると、クスッと笑う声がした。
「社内の誰かがいつ来てもおかしくないところでこんなことしてるなんて悪いことをしている気分だな」
言葉とは裏腹に楽しそうに言う。
「だったら早く離れてくださいっ!」
こっちもヒヤヒヤハラハラドキドキのコンボなのに!
「えー、もうちょっと満喫させてよ。こういうのって社内恋愛の醍醐味じゃない?秘密の逢瀬って感じで」
「冗談はやめてください!私は心臓に悪いです。誰かに見られたら……」
醍醐味とか意味が分からない。
人の目が気になるから早く解放して欲しくて、懇願するように見上げた。