次期社長と訳あり偽装恋愛

定時になり、友田さんと桐野さんは早々と帰っていった。
あれから私の恋バナを聞かれることはなかったからよかったけど、やっぱり私は自分の話をするのは苦手だなと改めて思った。
これ以上、追求されないことを心の底から願う。

さて、そろそろ玲奈にドタキャンの連絡をしようかな。
ふと隣を見ると、宮沢がボーッと一点を見つめていた。
今日は定時に帰るために仕事を終わらせるって言ってたんだけど。

「ねぇ、片付けないの?」

「……」

「宮沢、定時過ぎてるよ。おーい、宮沢!」

私の声が耳に届いていなかった様子の宮沢の腕を軽く叩く。

「あ、もうそんな時間か」

「ちょっと、大丈夫?」

心ここにあらず、といった感じで心配になる。
私も一緒にいた方がいいんじゃないかと思うほど。
だけど、それじゃあ告白するチャンスを逃しそうだから難しいところだ。

でも、宮沢なら決める時は決めてくれると思う。
仕事でもそうだし。

「大丈夫だ。ちょっと考え事をしてただけだから。まぁ、当たって砕けろで頑張ってくるよ」

そう言ってキリッとした表情になる。
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