次期社長と訳あり偽装恋愛

よく言えばクールだけど、あんなのはどう見ても無愛想でしょ。

しかも、不機嫌な時の絶対零度の睨みは震え上がるぐらいだ。
妹の私にも容赦ないから、あのあだ名はピッタリだと思う。
それに引き替え、立花課長は優しくて紳士的な人だ。

「さっきから思ってたんだけど、課長って呼び方は止めてもらえると嬉しい」

「どうしてですか?」

不意に言われた言葉に首を傾げた。

「今はプライベートなのに、課長なんて役職で呼ばれたら居心地も悪いし、仕事の延長みたいな感じでリラックスできないんだ」

なるほどな、と思った。
立花課長と食事をするのは今日限りだ。
お互いに楽しい気分になった方がいいよね。
言う通りにしよう。

「分かりました。では、立花さんでいいですか?」

「まぁ、そうだね。出来れば仕事の時もそれで呼んで欲しいけどね」

ニッコリと笑顔を浮かべる。

「さすがにそれはちょっと……」

「じゃあ、二人の時だけでいいよ。これは約束だから」

強引に押しきられたけど、二人きりになることはないと思うから、まぁいいか。

「せっかく一緒にご飯食べてるんだから、ざっくばらんに何でも聞いてね」

「はい」

何でもか……。
どこまで聞いていいのか難しいところだ。

話をしていたら前菜が運ばれてきた。
季節の彩りサラダという名の通り、トマトの赤やレタスの緑など目でも楽しめる。
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