次期社長と訳あり偽装恋愛
「宮沢くんと仲がいいのは知ってるけど、ちょっと距離が近すぎだと思う」
タクシーの車内でボソリと立花さんが呟くように言う。
距離が近すぎ?
「そうですか?そんなことはないと思うんですけど」
「じゃあ、逆に聞くけど女の人が俺と親しげに触れ合ってたらどうする?」
立花さんが他の女の人と触れ合う……そんなの想像しただけでも無理だ。
「嫌です」
「よかった。これで別に構わないとか言われたらどうしようかと思ってた」
私が即答すれば立花さんはホッとした表情になる。
「そんなの言う訳ないです」
「梨音ちゃんと宮沢くんが触れ合うのが嫌だっていう俺の気持ちも分かってくれた?」
自分に置き換えたら理解できた。
間違いなく立花さんが触れた女性、例え同期だとしてもヤキモチを焼いてしまう。
私にも独占欲というものがあるんだと初めて知った。
それと同時に、立花さんもヤキモチを焼いてくれていたことに嬉しさを噛み締める。
「はい。これからは気を付けます」
「いい返事だね。そうしてくれると俺も安心だよ」
お互いに顔を見合わせてクスリと笑う。
「ここがタクシーの中じゃなかったら抱きしめてキスをしていたかもね。だから今はこれで我慢する」
立花さんは指を絡めて手を繋ぐ。
私は言われた言葉に顔を赤くしながらも、幸福感に包まれていた。