次期社長と訳あり偽装恋愛
エレベーターに乗り正面を向くと、立花さんがまだその場に立ち止まっていた。
目が合うと、何かを決意したような強い眼差しで私を見ている。
どうしてそんな目で私を見るの?
久しぶりに目が合い、動揺してしまう。
「おい、翔真。何してるんだ?」
高柳課長に呼ばれた立花さんが顔をそちらに向けると、エレベーターの扉が閉まった。
心臓がバクバクと大きな音を立て、気持ちを落ち着けようと深呼吸した。
さっきの立花さんの表情は何?
それに、彼女と別れていないと言ったのはどういうこと?
もう私の頭の中はグチャグチャだ。
キャパオーバーになった私はあれこれ考えることを放棄し、会社を出て駅に向かう。
街中はクリスマスムード一色だ。
イルミネーションがキラキラと輝いている。
立花さんと付き合っている時、クリスマスはお互いにプレゼント交換しようという話をしていたけど、今となってはそれは叶わぬ夢……。
はぁと白い息を吐きながら見上げた夜空は澄みきっていて、星が綺麗に輝いている。
そういえば、花火大会の日に立花さんと見た空を思い出す。
あぁ、まただ……。
ことあるごとに立花さんのことを思い出してしまう。
この胸の痛みはいつになったら癒えるんだろう。
冷たい風にブルリと震え、マフラーに顔を埋めて家路へと急いだ。