次期社長と訳あり偽装恋愛
どうしてまた……。
週が明けた月曜日、私は社長室の前にいた。
昼休憩が終わり午後の仕事に取りかかっていたら、社長秘書の亀井さんから内線が鳴った。
そしてなぜか社長室に来るようにと言われた。
社長に言われた通り、立花さんと別れたし迷惑をかけるようなことはしていないと思う。
それなのに、また社長室に行かないといけないのが理解できない。
まだ心の傷も癒えてないのに……。
深呼吸し社長室のドアをノックした。
「どうぞ」
「失礼します、企画部の河野です」
中から聞こえてきた声を確認し、ドアを開けて目に飛び込んできた人に唖然とした。
「え、しげさん?」
あの高級なソファーに清掃員のしげさんが座っていた。
でも、今日はいつもの作業服じゃない。
スーツを着ていて、まるで別人だ。
「河野さん、会長に向かってしげさんとは失礼ですよ」
「す、すみません」
亀井さんに注意され、慌てて謝罪する。
え、ちょっと待って。
会長ってどういうこと?
「いいんだよ。いつものようにしげさんで。やあ、待っていたよ。梨音ちゃん」
立ち上がり、にこやかに笑うしげさん……もとい、会長。
「お父さん、いや会長。彼女を呼び出してどういうつもりですか?」
社長の声にビクッと反応し、この前のこともあり怖くて俯いてしまう。