次期社長と訳あり偽装恋愛
「父親なら息子の言葉に耳を傾けてやるのは当然だろ。翔真はお前の道具じゃない」
しげさんの言葉が社長室に響く。
「翔真は会社の為、お前の為に尽力してきた。身近にいたお前はそのことは十分に理解しているはずだ。それに縁談がなくてもプロジェクトを成功させる力を持っている優秀な社員はたくさんいるだろう。翔真を含め、お前がしっかりと育ててきたんじゃないのか?」
しげさんの問いかけに社長が息を飲む。
「昨日、お前に逆らうことがなかった翔真が頼むから銀行の娘との縁談を破棄してくれと言ってきただろ。自分がもっと早く動いていなかったせいで好きな人を泣かせてしまったと悔やんでいた。あんな翔真を見たのは初めてだよ」
立花さんが?
私の知らないところでそんな話をしていたなんて……。
バタバタと足音が聞こえ、勢いよく社長室のドアが開いた。
「じいちゃん、どういうことだ!」
そこに飛び込んできたのは立花さんだった。
「翔真、遅いじゃないか」
「これでも急いできたんだよ。いきなり社長室に来いって電話があって何事かと思ったよ」
立花さんは息を整えながらネクタイを緩めていたら、私に気づいて目を見開いた。
「梨音ちゃん……」
「わしが呼んだんだよ。翔真、梨音ちゃんの隣に座りなさい」
しげさんに促され、立花さんは私の隣り座った。