次期社長と訳あり偽装恋愛
「これはどういうこと?親父、まさかまた梨音ちゃんに酷いことを言ったんじゃないだろうな」
立花さんの怒気を孕んだ声に社長も気まずそうに肩を竦める。
「私は何も……」
「梨音ちゃんを傷つけるようなことを言ったら絶対に許さないと伝えただろ。これ以上、彼女を巻き込まないでくれ」
立花さんの言葉に私は泣きそうになった。
私から別れを切り出したのに、守ってくれている。
「翔真、落ち着きなさい。お前たちを呼んだのは他でもない。二人の縁談についてだよ」
しげさんがニッコリと笑う。
「二人のってどういうこと?」
「翔真と梨音ちゃんに決まっているだろ」
「本当に?」
驚きの声をあげた立花さんと目が合う。
「あぁ。和志も納得済みだよ。なあ、和志」
しげさんは視線を社長へと向ける。
「翔真、勝手に縁談を決めてすまなかった。私は目先のことにとらわれて周りのことがよく見えてなかったんだ。翔真のことも部下のことも……。私は父親としても社長としても失格だ。縁談の話はこちらで話をつけるから安心してくれ。河野さん、君には酷いことを言ってしまった。本当に申し訳ない」
そう言って深々と頭を下げた。