次期社長と訳あり偽装恋愛
食器を洗い終わり、お湯を沸かす。
カップにコーヒーを淹れてテーブルに置いた。
立花さんにコーヒーはアイスとホットのどちらがいいか聞くとホットが飲みたいと言った。
私は氷を入れてアイスにした。
さっきは炭酸のジュースが飲みたかったけど、今はそんな気分じゃなくなった。
「あのさ、ちょっと図々しいお願いしてもいいかな」
コーヒーを飲んでいた立花さんがおもむろに口を開く。
「何ですか?」
「仮だけど、俺たちは彼氏彼女だよな?」
「そう、ですけど」
「飯を作るのに一人分は難しいんだよな?」
「はい」
確認するように聞いてくる。
一体、立花さんは何が言いたいんだろう。
「俺は料理は全く作れないし、手料理に飢えている。河野さんさえよければ、またこうして料理を作ってくれないか?」
いきなりの提案に目が点になった。
「もちろん、食材費はこちらが払う」
「いえ、そんなことしていただかなくてもいいんですけど」
「で、どう?」
期待を込めた目で見られ、断ることなんて出来る訳がない。
何だか分からないけど、私の料理を気に入ってくれたみたいだし。
「分かりました。私の料理でよければ」
「そうか。ありがとう」
立花さんは優しく微笑んだ。
こうして私は、立花さんが仕事が遅くならない日は料理を作ることになった。