次期社長と訳あり偽装恋愛
「友田さん、面白い話をしてるね」
「あっ、高柳課長!」
いつの間にか、高柳課長が私たちの背後にいた。
「翔真が手作り弁当を食べていたって本当?」
「本当です。社員食堂で二段重ねの可愛いお弁当箱をひろげていたのを見たんです。高柳課長は何か聞いてませんか?」
友田さんは興味津々といった様子で聞いている。
高柳課長と立花さんは同期で仲がいい。
もしかして、偽装彼女の話をしているのかもしれない。
私の心臓は早いリズムを刻みながら動いている。
「いや、何も聞いてないな。アイツは料理が苦手だから自分で弁当なんて作る訳がない。意外と潔癖なところもあるから、自分が信頼していない人からの手作りなんて絶対に食べない。ということは、ホントに彼女が出来たのかも」
高柳課長は話を聞いてないのか。
ホッとしたのもつかの間、彼女という言葉に反応してしまう。
「やっぱりそうなんですか!」
「聞いてみないと分からないけど多分ね。もしかして、この話って広まってる?」
「どうでしょう。でも他の部の人たちもザワザワしていたので……」
「そうか、じゃあ噂になるのも時間の問題だな。アイツは噂嫌いなくせに何を考えてるんだか……。それにしても社食で手作り弁当を食べる、ね。なるほど」
高柳課長はそう呟き、自分の席へと戻って行った。
私は噂になるのも時間の問題という言葉にハッとした。