次期社長と訳あり偽装恋愛
他の部署の人もザワザワしていたと言ってたから、遅かれ早かれこの話はいろんな人の耳に入ってくると思う。
多分、立花さんも私と同じように何も考えずに社員食堂でお弁当を食べたんだろう。
普通はお弁当を食べただけで噂になるとか思わないでしょ。
でも、相手はあの立花さん。
よく考えたら女性物の弁当箱、可愛い保冷バッグを持っていたら気になるのは当然だ。
さっきは呑気に考えていたけど、噂になったら大変だよね。
立花さんは大丈夫かな。
あのお弁当を作ったのが私だということはバレないと思うけど。
ふとスマホに視線を落とすと、メッセージが届いていたのに気づく。
送り主は立花さんだ。
《あの玉子焼き、甘くて俺好み。また作って》
それを見て無意識に頬が緩んでいた。
「梨音先輩、どうかしたんですか?」
「へっ、何が?」
「スマホを見てニヤニヤしてるから」
友田さんに指摘され慌てて表情を引き締める。
「そんなことないよ」
「えー、何か嬉しそうにしてましたよ」
「友達からくだらないメッセージが届いたから笑ってただけだよ」
「なぁんだ、そうだったんですね」
苦し紛れの言い訳しか思い浮かばなかったけど、友田さんは納得してくれたみたいだ。
こういうところは純粋で助かっている。
また……か。
立花さんに噂のことを相談してからお弁当は作った方がいいよね。
《そう言ってもらえてよかったです》とだけ入力して送信した。