次期社長と訳あり偽装恋愛

「へぇ、どんな?」

楽しげに聞いてくる。

「立花課長が彼女からの手作り弁当を食べていたって」

「なるほど。でも、間違いじゃないだろ。あの弁当は彼女に作ってもらったものだし」

彼女、じゃなくて偽装彼女ですけど。

「あの、いいんですか?会社の人に誤解されたままで」

「あー、大丈夫。河野さんが気にすることはないよ。寧ろ、社内でこの話が広まったのは俺的にはよかったと思っている」

どういうことだろう。
あっ、もしかして彼女がいるってことにしたら他の女子社員の人から告白されたりしなくなるからだろうか。
奇しくも、この休憩スペースは立花さんが告白された場所。
そういうのが減るってことなのかもしれない。

「それより、さっきのため息の原因は解決しそう?」

立花さん、まだ気にしてくれていたんだ……。

「はい。もう大丈夫です。自分の未熟さに落ち込んでいただけなので。気持ちを切り替えて頑張ります」

ダメ出しをされるのはよくあること。
改善点も分かってるし、あとは自分で努力するだけ。

「そっか、ならいいけど。悩み事や心配事があったらちゃんと教えるように。彼女の落ち込んでいる姿は見たくないからね」

その言葉を聞いて胸がキュンとなる。
彼女って私のことだよね。
こういうのに慣れてないので、恥ずかしいやら照れくさいやらで視線が泳ぐ。
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