次期社長と訳あり偽装恋愛

私はモスコミュールを注文し、舞はなぜがオレンジジュースだった。
いつもはビールとか普通にお酒を飲むのに……。

舞は自分の前に置かれたオレンジジュースの入っているグラスを持ちひと口飲んだ後、口を開いた。

「あのね、梨音に聞いてもらいたいことがあって」

なんだろうと私は身構えて次の言葉を待った。

「私、好きな人が出来たの」

「へ?」

神妙な口ぶりで話すから、一体どんな内容なのかビクビクしてたのにドッと力が抜けた。

「なんだ、そうだったのね。どんな人なの?」

「会社の先輩の紹介で知り合ったんだけど、すごく優しい人なんだ」

「へぇ、それでそれで」

「何度か食事に行ったり、グループで遊びに行ったりしているうちに……」

「好きになったんだね」

舞は恥ずかしそうに頷く。
なんかいいなぁ、そういうの。
恋をしてますって感じで私とは大違いだ。

本物の恋と、偽装恋愛。

あのデコチューの次の日、立花さんは普段通りだった。
というか、その日の夕方に《明日もお弁当お願いできる?》というメッセージが届いた。

私だけ変に意識していたのがバカみたいだけど、キスをした理由を知りたかった。
でも、よく考えたら立花さんは三月まで海外にいたので、あんなのは挨拶程度で理由はないんじゃないかという結論に至った。
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