御曹司様の求愛から逃れられません!
玲奈さんと行った森のカフェに今日は日野さんと来て、オススメセットをふたつ頼む。
今日はビーフシチューと石窯パンだった。

私は今までの経緯を話す。
玲奈さんのことも含め、もう日野さんには内緒にしておけそうになかった。一週間で答えを出さなければならない、と打ち明けると、日野さんはパンをちぎりながらフンフンと頷いた。

「本部長のこと好きだけど、勇気が出ないんだね」

「……勇気というか、間違ってる気がして」

日野さんに相談すると、自分がいかに面倒くさい女であるかを自覚する。いつまでもぐらぐらして、答えが出せない。

「間違っててもいいじゃない。そんなこと付き合ってから考えれば?試しに付き合って、ダメだったら別れるの」

「そんな簡単に……」

「無理なの?」

私はぐっと言い淀み、観念して口を開く。

「……一度付き合ったら、引き返せないと思う。私、きっと自分のことしか考えられなくなる。そうなったら絢人さんを不幸にしてるって分かっても、別れるなんてできない」

「それならそれで、本部長は願ったり叶ったりなんじゃない?」

呑気なんだから……。
外野は何とでも言える、今ばかりはそう思った。御曹司に求愛されるなんて妄想こそすれ、現実に起こることはそうはない。

実際目の前にすれば怯むものだ。
会社の役員たちに、関連会社の社長たち、玲奈さんの関係者たちに、絢人さんの父親である『株式会社 月味フーズ』の社長。
絢人さんの恋人が私じゃなければいいのに、と全員が思うだろう。
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