御曹司様の求愛から逃れられません!
明日から絢人さんがいないのだと思うと、何故だか涙が出そうになった。それはそうか。このサークルで三年間、私は彼とずっと一緒だった。
可愛がってくれたし、私も一番、信頼している大好きな先輩だ。本当にそれだけ。

彼に群がる女の子たちも分かっている。人気者の絢人さんの恋人に、自分が選ばれるわけはないこと。それでも皆、絢人さんが好きなのだ。罪な人。
だからあんなに泣けてくる。その気持ちはすごく分かる。

囲まれっぱなしの絢人さんは、しばらくしてキョロキョロと視線を泳がせ始めた。
どうしたんだろう、誰かを探してる?

女の子の集団にひとりひとり目線をやり始めたので、彼が探しているのは女の子だと分かった。
……私、まだ、挨拶してない。もしかして……

「いた!真夏!」

絢人さんは集団から外れた私を見つけると、女の子たちの間を縫ってこちらへ駆け寄ってきた。
やっぱり、私……?

学部の代表として壇上へ登った絢人さんは、卒業証書の筒を持っていた。
それを肩に乗せながら、私の頭をぐりぐりと撫でまわしてくる。

「あ、絢人さんっ、ちょっともう。……えっと。その、ご卒業おめでとうございます」

撫で回す手を払って、きちんと目を見てそう言うと、彼は少し切ない表情をした。……どうしたんだろう、初めて見る顔だ。
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