御曹司様の求愛から逃れられません!
私は、歩いている方向が私のマンションとは逆方向だと気付き、絢人さんを見た。

「あの、私の家は反対方向なので、ここで大丈夫です」

一応報告したのに、彼は肩を放す気配はまったくなく、軽く無視をしている。
私は肩にある彼の手をチョンとつついた。

「俺が真夏のこと、一時間で帰すと思う?」

こちらを見ずにそんな言葉だけが返ってきた。私は驚くことなく「ですよね……」と思ったけれど、それでもこれからどこへ向かうのかは分かっていない。

「あの、まだお付き合いできますが、どこへ行くんですか?」

「俺の家」

さすがに足が止まった。
口を開けたまま超至近距離にいる絢人さんの顔を見たけれど、じっと私を見つめ返すだけで何も言ってはくれない。

「絢人さんの家……近くなんですか?」

「そう。ここから歩いて五分。タクシーで行きたい?呼ぼうか?」

「い、いえいえいえ……そうじゃなくて……」

じゃあ、私と絢人さんはめちゃくちゃ近くに住んでるってことだ。
これからたくさん呼び出される可能性大……。

……って、問題はそこじゃなくて。

「い、今から……絢人さんの家に行くんですか?」
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