御曹司様の求愛から逃れられません!
「……それが、泣いていたことに何か関係があるんですか?」

話が見えなくてそこを蒸し返すと、彼の目尻にまた涙が溢れ始めた。私はまた叫ばれるのかと思って先に耳を塞ぐ。

「貴女のせいですよ!園川さん!」

ビシッと指をさされ、私も思わず自分のことを指さし、「私!?」と聞き返した。まったく覚えがない。
絢人さんや樫木さんには、失礼なことをされた記憶はあっても、失礼なことをした記憶はない。

「私が何をしたって言うんです?」

「貴女が最近、志岐本部長の回りをウロチョロしているから、僕は業務に支障が出ると感じたんです。社内の女性に気安く近づかないよう助言し、常にガードしておりました。そしたら最近、冷たくて冷たくて……!もう虫けらを見るような目で僕を見るんです!」

「あ、ああ……なるほど」

「それだけじゃない!昼間、貴女と志岐本部長のやりとりを聞いた後で、僕はまた助言をしたんです。園川さんのような、何も知らない平凡な女性は志岐本部長には相応しくない、と。遊び相手としても、もっと美しく、気品があり、家柄やお育ちに恵まれた女性と付き合うべきです、と!大学が同じだっただけのどこの馬の骨かも分からない女性など、志岐本部長を低めるだけの存在で、まったく相応しくない!とね!」

う、うわあ……。

これをさらに、私を目の前にして言うのだから重症だ。悪いことを言っている自覚がないのは、多分、すべて事実だからだろう。

ここまでくると酷すぎて逆に腹も立たない。
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