御曹司様の求愛から逃れられません!
しかし数秒で、それに対する絢人さんの返信が来る。いちいち手元でブルッと振動するのはビックリするため、私は音が鳴るようマナーモードを解除した。

【いや、今日話そう。一晩でも真夏を不安にさせたままでいるのは、俺が嫌だ】

不安になら、もうずっとさせられてる。
むしろ今夜は日野さんがそばにいてくれる分、いつもよりかなり安心して眠れそうだ。

私はベッドの上に画面を見せた。すると日野さんから「それはひとまず無視」との指示を受ける。

「……次はどうしたらいいかな」

「園川さんがどうしたいか、一緒に考えてみよう」

ここで彼女はこちら側にあるテーブルに移動してきて、私が持ってきたデザートのプリンを開けた。私もそれに従い、体を起こしてテーブルにつく。

時刻はまだ八時半なのだ。

「まず、その婚約者のこと。本部長と、すれ違った本人と、樫木さんの話から考えるに……婚約者ってことは間違いないみたいだね」

「……そうなの」

「でも、本部長がその人に愛があるかは別の話ってことなのかも」

……その可能性は少しだけ考えた。そうだったらいいな、とも思う。

「でも、私にとっては……絢人さんが婚約者を愛してるかどうかは、関係ないの。最後に彼の隣にいられるのは誰かってことが重要だから」

「なるほどね……。婚約者が結婚相手である限り、優先してもらえる日は来ない。だから愛がどっちにあるかは気休めでしかないってことか」

考えを言語化するというのは有効かもしれない。自分が何を悩んでいて、どうしてこんなに苦しくなるのかがよく分かる。

婚約者は結婚の話を急かしていた。あの日も打ち合わせに来ていたのだし。……そして絢人さんはそれを承諾したから、そのあと玲奈さんを部屋に入れた、ということ。
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