御曹司様の求愛から逃れられません!
最初にレンタルショップに寄り、ミステリー映画を借りた。駅に近づいたがこの格好なので、行きつけではなく三分余計に歩いたコンビニへと向かう。

その途中、お腹のポケットに入れていた携帯電話が振動し始めた。

しばらく鳴り止まないのでコンビニの入り口で画面を確認すると、電話で、しかも相手は絢人さんだった。
私は一旦、コンビニには入らず、入り口のそばで電話に出る。

「……はい。もしもし」

『あ!真夏!』

勢いのある声が響き、思わず電話を数センチ耳から離した。
すぐに戻すと、続いて『今大丈夫か?』と形だけの確認をしてきたので、私は「コンビニにいるだけですが、かけ直しますか」と冷静に返事をした。しかし彼はその提案を押し退けて、話を先へ進め始める。

『真夏さ、今、俺の家来れない?』

なっ、なにそれ!

もう一度耳から画面を離し、電話の相手は絢人さんで間違いないか名前を確認した。……間違いない。
おかしいな……告白されて、曖昧な態度で振り切って、気持ちが固まるまで待ってくださいとお願いしてある、あの絢人さん?

その状態の絢人さんがこんなことを言ってくる?

私は不信感いっぱいの声で「どうしてですか」と聞き返した。

『ちょっと手伝ってほしいことがあってさ』

「え? 何です!? 手伝ってほしいこと!?」

つられて私もどんどん声が大きくなる。
周囲の人が振り返るので、コンビニに背を向けた。
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