御曹司様の求愛から逃れられません!
電話の向こうから激しいタイピングの音がしている。パソコンを使っているらしい。だとすると、仕事?

「えーと、いったい何をしたら……」

『あれ?待てよ?……今って、真夏は俺と距離置いてるんだっけ』

「へっ?」

そうです。
でも改めて聞かれると「はい置いてます」とは言いにくい。だいたい聞かなくても分かってるでしょうに、何を初めて聞いたような調子で確認してくるのだろう。

『悪い!そうだったよな!つい、お前にしか頼れないことだったから……。いや、大丈夫だ。忘れていい。俺だけで何とかする』

「ま、待ってください。大丈夫なんですか?手伝うってどんなことなんです?」

『大丈夫だ。悪かったな。おやすみ』

ブツン、と電話は切られた。この人は本当に……。
繋がっていない電話を耳から離すと、じろりと睨み付けた。
そんなふうに一方的に言われたら気になるじゃん。私にしか頼れないなんて、ただ事じゃなさそうだし……。

私はとりあえずコンビニの中に入った。
おにぎりをいくつか選び、ついでに甘い飲み物も手に取った。エナジードリンクも目に入る。私には全然必要ないが、絢人さんは今頃パソコンを使って仕事をしているんだろうか。
私はエナジードリンクも手に取った。

ついでにもうひとり分のサンドイッチ、お茶、そしてプリンも買い込み、袋に詰めてもらう。

「……絢人さんのバカ」

もう帰ったって映画に集中できそうにない。私はレンタルビデオの袋とコンビニ袋をぶら下げて、絢人さんのマンションへと向かった。
< 88 / 142 >

この作品をシェア

pagetop