御曹司様の求愛から逃れられません!
彼にもそれがバレたらしい。私の耳元に唇を寄せ、そこから色気を注ぎ込むかのように囁き始める。

「頑張ったご褒美をくれたりはしない?」

「ご、ご褒美って……」

「真夏の返事はちゃんと待ってるよ。それは急かすつもりないから。……でもキスしてくれるなら、してほしい。キスだけでいい。真夏に触りたい」

なんでそんなとんでもないこと言ってくるの……!

こちらもバクバクと鳴っている心臓のせいで冷静には考えられない。絢人さんはそこを突いているのだ。私の弱いところにつけ込んで、決してチャンスを逃さない。彼の得意技である“なし崩し”の術中に今夜もハマまっていることに今頃気づいた。

「ダメ?……来週からオーストラリアなんだ。この二週間だって必死で我慢したのに、また真夏に会えなくなるなんて考えただけで死にそう」

「い、今まで何年も会わなかったのに……」

「そのときと今は違うだろ。今の俺は真夏とキスもしたし、何度か抱いてる。もう体がそのときの気持ち良さを覚えてるから」

絢人さんは背中に手を回し、それを反対側から私のお腹のポケットの中に入れてきた。気を抜いていたお腹に突然触られて「ひゃっ」と変な声が漏れる。

距離もぐっと近くなり、肌に触れていないとはいえこれはイエローカードである。
パーカー越しのお腹を引き寄せられ、膝の上に座らされた。

「絢人さんっ」

「早く。いいか、ダメか、言って。我慢できなくなる」
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