御曹司様の求愛から逃れられません!
瞳の熱くなった彼にギョッとして、背筋を伸ばした。

もうすぐ日付が変わる時刻。

編集作業には終わりが見えたが、完全に終わったかと言えばそうとも言えない。私と絢人さんのように曖昧な状態で、このままでは私が帰るタイミングも曖昧だ。編集作業が終わったらなのか、それとも日付が変わったらなのか。それとも、ここで寝かせてもらうのか。

大学時代は自由だった。どちらも仮眠をとりながらの編集作業などよくあることだったのだ。
……今日はどうすればいいのか。

両こぶしをしっかりと膝にあてて考え込んでいると、絢人さんは距離をわずかに縮めた。

「……真夏」

「は、はい」

「何かしてもいい?」

ゆっくり手を伸ばして、さらさらと髪に触れてくる。
何かって、何!

絢人さんは片足を立ててソファーの上に乗せていて、そこに肘をのせて私を上から下まで眺めては、熱っぽい表情を見せた。
返事をしないでいると、立てた膝に乗っている腕が私のパーカーのフードをいじり始める。

「今日の真夏、可愛い」

いや、今日の私は絶対可愛くない……。
恥ずかしくなってフードを寄せて顎まで隠すと、絢人さんはさらに迫ってきた。

「あ、あの……絢人さんっ……」

直接肌を触ってこないのは彼なりの気遣いなのかもしれないが、これはこれで十分恥ずかしい。
視線を合わせず、自分の膝に目を落としたまま耐えていた。

「いつも可愛いけどな。真夏はどんな格好してても可愛いよ」

「やだ、可愛くないです……絢人さん、近いですってば」

「……ごめん。五時間も我慢してたから麻痺してるんだ」

“我慢”と言われ、体に火がついたように熱くなった。
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