俺の同僚曰く、世界平和はどんちゃん騒ぎと笑顔でできている「上」
「……誘拐と監禁ですね。現行犯で逮捕しましょうか?」

俺がそう言うと、男性は笑い出した。

「誰がお前のようなムキムキで可愛げのない奴を誘拐するんだ。それに、私とお前は一度会っているのだから、もう知人だろう。決して誘拐や監禁ではない」

男性は高級なスーツのポケットからタバコを取り出し吸い始めた。タバコなんて一般人は吸えない。それほど高い。

俺は男性から顔を背けるように、窓の外を流れる景色を見つめた。夕暮れの街には、ポツポツと明かりが灯っている。

馬車はゆっくりと道を進み、街の外れへと出た。そこには大きな屋敷が建っていて、俺は一気に帰りたくなる。

この屋敷の中で話をするつもりなのか、という俺の予想は的中した。馬車は立派な門をくぐり、止まる。

御者が降りて来て、また扉を開けた。

「さあ、降りなさい。ここは私の屋敷だ。ここで話をしよう」

「……話ならもっと別の場所でしませんか?例えば酒場とか」

暗い顔で言った必死の提案を、男性は首を横に振って否定する。

「だめだ!このご時世、酒場なんぞ犯罪者のたまり場だ!それに酒場の出す酒はまずくてかなわん」

そんな風にさせたのはお前らだろう!と俺は怒鳴りたくなった。
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