【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
「真澄さん……」
いつの間にか解かれていた手を胸元に戻し、右手だけ上に伸ばす。真澄さんの頬に触れると彼の体がピクッと跳ね、なんだかそれがおかしくて、左手を口元に当てるとクスッと笑みを漏らす。
「何、その笑い。余裕、ありそうだな」
「よ、余裕なんてないですよ。ただ……」
「ただ、何?」
緩やかに目を細めた真澄さんは、わたしの頬を撫でる。
「真澄さんといると、楽しいなと思って。でもわたしは真澄さんみたいに体力には自信ないし強くもありません」
素直な気持ちが言の葉となって、口からふわりとこぼれ出た。
「楽しい……そうか、ならよかった。でも蘭子が言うほど、俺は強い人間じゃない」
真澄さんはそう言いながら、わたしの上に馬乗りになっていた体を倒す。
「え?」
覆いかぶさるように抱きしめられ、真澄さんの顔が見えなくなってしまった。
真澄さんが強い人間じゃない? 何おかしなことを言っているの? いつも勝手で偉そうな態度のくせに。
どの顔がそんな事を言っているのかと、わたしの肩口に顔を寄せているかれの顔を覗き込む。でも前にもこんなシチュエーションがあったことが頭をよぎり動きを止め、また記憶の淵を探った。