【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
「私も驚いたよ。今朝、愛川先生、いつもみたいに受付に来なかったんだ。皆でどうしたんだろうって話してたら、珍しく院長とエレベーターから降りてきたんだけど……」
そこまで言うと乙葉さんは、わたしの顔を窺う。その顔を見て言いにくいことがあるんだと悟ったわたしは、大丈夫と言わんばかりに笑顔を見せた。
「全部、話してください」
乙葉さんが言いよどむくらいだ、その内容は私の胸をえぐるものなんだろうと覚悟を決める。乙葉さんには申し訳ないが、知っていることは何もかも話してほしい──そう訴えるように体を起こすと、彼女の目を真っ直ぐ見つめた。
「わかった。そうだよね、蘭子には聞く権利があるよね」
腹を決めたのか乙葉さんは頷き、椅子に姿勢良く座り直す。
「院長の後にエレベーターから降りてきた愛川先生、ひとりじゃなかったんだよね。隣に女の人が一緒にいたの。後でわかったんだけど彼女、大学病院の教授の娘で優秀な外科医なんだって」
乙葉さんはそこで一度話を止め、大きく深呼吸した。わたしも思わず息を呑む。
「どうやら愛川先生が結婚するのは、その女医さんみたい。婚約も整って、近々両家で結納を取り交わすって」
「結納……」
私の中で何かが、ガラガラと崩れ落ちる。どうしてそんなことが、急に起こるのか。婚約? 結納? それって数時間で決められることじゃないでしょ?