【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
力が入らない足でなんとかたどり着いたのは、旧病棟の最上階。レストランの奥にある、展望のいいオープンスペース。窓際の椅子に座り、窓の外に目を向けた。
ロビーからの景色もいいが、ここからの見晴らしも悪くない。遠くに雪化粧した山脈が見えて、少しだけ、ほんの少しだけ心が和らぐ。
「すみませんでした」
「何が? 蘭子が謝るようなこと、なにもないでしょ」
「どう、でしょう……」
頭の中がどうかしてしまったのか、思考能力が鈍る。自分が今、何を考えているのかよくわからない。
「ごめん、蘭子。単刀直入に聞くけど、愛川先生のこと、どこまで聞いた?」
真澄さんの名前が出て、頭の片隅が疼く。テーブルに片肘つくと、そこに手を当てた。
「真澄さん、結婚するみたいですね。まさか院長先生の息子だったなんて、もうびっくりです」
驚きすぎて笑うしかない。
どうしてこんなことになったの? 朝出かけていく時は、いつもと変わらなかったのに……。
真澄さんを見送ってから、たった五時間。その五時間の間に、何が起こったというのだろう。
両手で頭を抱えると、テーブルに突っ伏した。