【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし

力が入らない足でなんとかたどり着いたのは、旧病棟の最上階。レストランの奥にある、展望のいいオープンスペース。窓際の椅子に座り、窓の外に目を向けた。

ロビーからの景色もいいが、ここからの見晴らしも悪くない。遠くに雪化粧した山脈が見えて、少しだけ、ほんの少しだけ心が和らぐ。

「すみませんでした」
「何が? 蘭子が謝るようなこと、なにもないでしょ」
「どう、でしょう……」

頭の中がどうかしてしまったのか、思考能力が鈍る。自分が今、何を考えているのかよくわからない。

「ごめん、蘭子。単刀直入に聞くけど、愛川先生のこと、どこまで聞いた?」

真澄さんの名前が出て、頭の片隅が疼く。テーブルに片肘つくと、そこに手を当てた。

「真澄さん、結婚するみたいですね。まさか院長先生の息子だったなんて、もうびっくりです」

驚きすぎて笑うしかない。

どうしてこんなことになったの? 朝出かけていく時は、いつもと変わらなかったのに……。

真澄さんを見送ってから、たった五時間。その五時間の間に、何が起こったというのだろう。

両手で頭を抱えると、テーブルに突っ伏した。

< 191 / 258 >

この作品をシェア

pagetop