【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし


「ただいまぁ」

母が亡くなってから伯母夫婦の家に行くときは、いつもこの挨拶。『自分の家だと思って帰ってきてね』と伯母に言われて、そうさせてもらっていた。

廊下の奥からパタパタとスリッパの音が聞こえると、それが伯母とわかり頬が緩む。

「蘭子ちゃん、どうしたの? 帰ってくるなら連絡くれればよかったのに」

角から顔を出した伯母が、驚くような顔を見せた。

「美智子おばちゃん、ごめん。バタバタしてて、連絡する暇なかったの」
「そうなの? でも嬉しいわ。ゆっくりできるの?」
「うん。少なくとも、一週間はこっちにいるつもり。いいかな?」

ダメと言われても、もう帰るところはない。いや、帰るつもりはない。

園枝さんには帰ると言って出てきたけれど、病院に戻って真澄さんの姿を見るのはツラすぎる。仕事を中途半端な形で投げ出すのは本意ではないが、今のわたしには受付を笑顔でこなすのは無理。少しでも真澄さんの姿を見てしまえば、仕事が手につかなくなるのは目に見えている。


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