【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
愛情ではないにしろ一度でも『今の愛川先生の方が好き』とか口走っちゃって、バカみたいじゃない。こういうとき恋愛ノーハウがないと、こういう事態に陥るのね。

はあ~と大きな溜息をつくと、力尽きてスツールチェアに腰を下ろした。

すると今まで黙って手を動かしていた愛川先生が、サラダを混ぜるため両手に持っていたサーバーを、ガチャンッと激しい音を立ててキッチン台に置いた。

「言いたいことはそれだけ?」

愛川先生の少し刺々しい口調に、体がビクッと跳ねる。

な、なんなのよ、その言いぐさは!

怒ってる? なんでキスした張本人の愛川先生が怒ってるの? 怒りたいのは、わたしのほうなのに。

愛川先生のことを睨みつけていると、こっちにゆっくりと顔を向けた彼と目線がぶつかった。いつもならすぐに逸らした目線も、今は負けじと見続けた。

「何をしてもいいなんて思ってない」
「なら、どうして……」
「蘭子だから、蘭子のファーストキスだから奪った」
「それって、どういう意味ですか?」

言っている意味がわからず、小首をかしげる。

わたしのファーストキスだから? わたしのファーストキスに、何か価値でもあるのだろうか。いや、ない。そんなもの、あるわけない。

勝手なことを言ってもらっては困る。奪われた方の身にもなってもらいたい。だいたい、わたしの気持ちはどうなるの? ファーストキスは一生に一度しかできないのに……。



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