【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
「真澄……そ、それが何か?」
「俺の名前。知ってるよね? 蘭子はいつまで、俺のことを“愛川先生”って呼ぶつもり?」
人差し指でツンッとわたしの頬を突くと、その手で唇を摘む。口調は淡々としているのに、見つめる目は甘く、そして優しい。唇に触れている愛川先生の指がかすかに動くと、体に甘い痺れが走った。
名前はもちろん、言われなくたって知っている。でもそんな顔で言われたって、どう反応していいのか困る。
「呼ぶつもりも何も、愛川先生は愛川先生ですよね? なんでわたしが、その……あの……」
真澄……と名前で呼ばなくちゃいけないんだろうか。
「ここは病院じゃない」
「わかってます」
「俺は蘭子の主治医でもない」
「当たり前です」
「だったら今すぐ、真澄って呼んで」
「だ、か、らっ……」
あぁ~、もう! どうして、そうなるのかなぁ。昨日から一緒にいて、この人には何を言っても敵わない──そう思っていたけど、ここまで来るとさすがにお手上げ。ああ言えばこう言う、何を言っても堂々巡り。もうこうなったら「真澄」と彼の名前を呼ぶまで、このやり取りは終わらない。ぜったーーーいに終わらない。
そう悟ると、諦めにも似た大きな溜息が漏れた。