【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
「受付カウンターに蘭子がいなかったから、探しに来た」
「探しにって、何か用事でも?」
少し前まで一緒にいたというのに、何があるというのだろう。
ん? っと首を傾げると、真澄さんはわたしと逆方向に首を傾げ、そのまま顔を寄せる。当たり前のように唇が触れ、「し忘れた」と真澄さんが至近距離でニヤリと笑った。
「真澄さん!」
「声が大きい。ここにいることがバレたら、マズいんだろ?」
声を大きくさせてるのは真澄さん、あなたでしょ!
そう叫びたいのをグッと堪える。
「今日は何時に上がれる? あ、いい。帰り支度ができたら連絡して。今日はたぶん、一緒に帰れると思うから。じゃ!」
真澄さんは満足そうな顔をして言いたいことを言うと、軽く手を振って物品庫から出ていった。
ひとり取り残されたわたしと言えは、真澄さんが出ていった扉を呆然と見つめるしかなくて。
「これじゃあ完全に、真澄さんのペースじゃない……」
力なく壁にもたれて、そっと唇に手を伸ばす。
真澄さんの唇が軽く触れただけなのに、その瞬間を思い出すと胸が締め付けられて苦しくなる。
なんなのよ、これ──
また勝手にキスされて腹が立っているというのに、頭に中に浮かぶのはニヤリと笑った真澄さんの顔ばかり。
「もう! 仕事仕事!」
ぶるぶると大きく首を横に振り、頭の中に居座る邪魔者を吹っ飛ばす。大きく深呼吸すると、息を整え物品庫をあとにした。