終わりは始まりか ~私達の場合~
そしてもう一度立ち上がると、麻生くんは真っ直ぐに私を見た。

「佐藤さんに怒られました。すぐにでも美月さんの所に戻って来ようとした俺に、お前に何が出来るんだと。」

陽輝は麻生くんの足にまとわりつく。

「そうなんです。確かに俺は自分の気持ちに正直に動いただけで、何も美月さんにしてあげられないんです。その事に気が付いたんです。」

「そうね。」

私は目に溜めた涙を何とかこらえる。

声にも動揺が出なかっただろうか。

「お前たち…。」

伊吹のそんな声すら、もう耳に届かない。

これで良いんだ。

私達は一緒に居ない方が、お互いの為に良いのだ。

「じゃあ、俺は帰ります。」

麻生くんの静かな声が響く。

< 164 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop