終わりは始まりか ~私達の場合~
もう少しで乗り越すところだった。

お酒はまだ残っているのかな。

私は慌てて新幹線を降りる。

思ったより頭はしっかりしているようだ。

もちろん足元も。

さっきまでの気持ちをここで振り払おう。

そして平凡だけど、穏やかな生活が始まるはずだ。

お母さんの事もあるけれども、少なくとも今までの表情で仕事をしなくても済むはず。

在来線に乗り換え、私は微妙な緊張感に包まれる。

懐かしいような、でもずっと遠ざかっていたことに遠慮を感じるような不思議な気持ち。

私は最寄りの駅に降りると、実家へ向かって歩き出す。

駅からほど近い所にある両親の設計事務所の前で一度立ち止まる。

私の新しい仕事場所。

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