勇気の魔法は恋の始まり。
水帆は頭の中に湧き上がる疑問の数々を瞬時に整理した。

 それでも目の前で起こった不可解な出来事は消化しきれない。

 もはやキャパオーバーである。
 
 ただ見てはいけないものを見てしまったという気持ちと覗いて見たいという好奇心が水帆の中を渦巻いていた。

 そうして水帆の脳は、ここから早急に立ち去らなければならない、と判断した。

 今なら後ろを向いている彼の背後から格技場の表へと抜けることができそうである。

 と、

「あの、」

 後ろから伺うように控えめな声が掛かる。

 びっくりして振り返ると、少し離れたところに立っている彼が、心配そうに且つ焦った様子でこちらを見ている。

 水帆の物音に気づいたのだろう。
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