勇気の魔法は恋の始まり。
自然に掲げられた左手と、その指先には青白い光。

 彼をどこからともなく取り巻く優しい風は、まるで妖精が彼と戯れているかのような不思議な印象を受ける。

 見ている水帆の心まで暖かくなるような感覚。

 それでいて、息をするのも憚れるような神聖な時の流れを感じる。
 

 しかし次の瞬間、温かな光も柔らかな風もふわりと消え去り、後に残ったのはすっかり乾いた様子の彼だけであった。

 すらっとしたスキニーパンツも、大きめのフード付きパーカーも、先ほどのずぶ濡れが嘘のようである。

「・・・待って、パーカー?ジャケットは?マジック?」
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